| 痛風 |
男性の病気といわれる痛風。
最近では30代で発病する人が多く、若年化傾向にあります。
痛風は、血液中の尿酸濃度の高い状態が長く続いた後に、体内にたまった尿酸が原因で関節炎が起こったり、腎臓が侵されたりする病気です。
日本では昭和30年代から増えはじめ、現在では約50万人の患者がいます。
痛風は、中高年の男性に多い病気とされてきました。
現在でも変わらず99%の患者が男性ですが、最近では30代で発病する人が最も多く、若年化する傾向にあります。
痛風になりやすいタイプは、行動的、大食い、酒飲みというように"エネルギーの出し入れの大きい人"がかかる傾向にあります。
社会的に活躍している人に多い病気でもありますが、高血圧、動脈硬化をはじめ、様々な成人病の誘引となることからも早期治療が大切です。
痛風とはどんな病気?
ある日突然、足の親ゆびの付け根の関節が赤く腫れて痛みだします。
痛みは万力で締めつけられたように激烈で、大の大人が2、3日は全く歩けなくなるほどの痛みです。
発作的な症状なので痛風発作と呼びますが、これはたいていの場合、1週間から10日たつとしだいに治まって、しばらくすると全く症状がなくなります。
ただし油断は禁物で、半年から1年たつとまた同じような発作がおこります。
そして繰り返しているうちに、足首や膝の関節まで腫れはじめ、発作の間隔が次第に短くなってきます。
このころになると、関節の症状だけでなく、腎臓などの内臓が侵されるようになってきます。
華々しい関節の症状と深く静かに進行する内臓障害。
陽と陰のある病気ですが、陰の方が目立たないのが重要です。
痛風にかかるのはほとんどが男性。
患者さん100人の中に女性は1、2名しかいません。
現代社会にあってさまざまなストレスと闘いながらも、それなりに元気に人生を送っている人の病気と言ってもよいでしょう。
痛風の歴史
痛風は西洋においては実に古い病気です。
エジプトから発掘されたミイラの関節の中に尿酸塩を見つけたという報告があります。
紀元前には、医学の父と呼ばれたヒポクラテスが報告しています。
西洋史上の人物で痛風に苦しめられてきた人は多く、マケドニアのアレクサンダ−大王、神聖ロ−マ帝国皇帝のカルロス五世、プロシア国王フリ−ドリヒ大王、フランスのルイ十四世、宗教改革のルター、清教徒革命のクロンウェル、芸術家ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ビンチ、詩人ダンテ、ミルトン、文豪ゲ−テ、スタンダ−ルやモ−パッサン、天才物理学者ニュ−トン、生物学者ダ−ウィンと、全く枚挙に暇がありません。
一方、日本では痛風は明治以前にはないとされた病気でした。
安土桃山時代に日本を訪れたポルトガル人宣教師のルイス・フロイスは日本人には痛風がないと記録し、明治のはじめにもドイツ人医師ベルツが「日本には痛風がいない」と記録しています。
痛風が日本史に忽然と現れるのは明治になってからで、実際に増えたのは戦後、それも1960年代になってからです。現在では全国に数十万人の痛風患者がいると推定されています。
痛風は、飽食の時代の病気です。
栄養事情が良くなると増え、戦争などで栄養事情が悪化すると減少します。
日本の痛風患者の増加の背景には食事内容が欧米化し、動物性蛋白質の摂取量が増えたこと、飲酒量の増加、社会構造の変化により個人の行動パターンが変化したこともあげられています。
痛風はなぜ男性に多いか?
痛風は圧倒的に男性に多い病気です。
1992年の東京女子医大の調査では男性が98.5%で女性はわずか1.5%でした。
これほど男女差のはっきりした病気も少ないのですが、理由もはっきりしています。
痛風の原因である尿酸の血液中の濃度(血清尿酸値)が女性では男性より低いからです。
これは女性ホルモンに腎臓からの尿酸の排泄を促す働きがあるからで、閉経後に女性ホルモンの分泌が減ると尿酸値は少し上昇します。
つまり50歳を越えると男女の尿酸値の差は小さくなります。
痛風発作は血清尿酸値が7.0 mg/dlを越える状態が数年間以上は続かないと起こりません。
この7.0 mg/dlになるのに平均的な男性では尿酸値が1.5mg上昇すればいいのですが、女性では3.0
mg/dl上昇する必要がありますので、女性はなかなか高尿酸血症にならず、痛風にもなりにくいのです。
痛風の診断は?
確実な痛風の診断は、痛風の発作中の関節の中に尿酸の結晶があることを証明することです。
これで診断は確定します。
ただし痛風の症状は特徴的なので、普通は状況証拠で十分に診断が可能です。
医師が使う痛風の診断基準は、次のようなものです。
1)症状が出てから1日以内にピ−クに達する
2)以前にも同じような症状があった
3)ひとつの関節だけに症状がある
4)関節の部位が赤くなる
5)関節が腫れている
6)足の親ゆびの付け根の関節に激痛、腫れがある
7)片足の親ゆびの付け根の関節に炎症がある
8)片足の足首の周りの関節の炎症がある
9)血液検査で尿酸値が高い
この9つの項目の6つ以上あてはまれば痛風である可能性が95%です。
痛風と似た病気
足の病気で痛風と間違えやすいものを紹介します。
1)外反母趾
これは足の親ゆびの付け根の関節から先の骨が外側に曲がっている状態で、親ゆびの付け根が内側に突出します。この変形だけでも少し痛みますが、炎症を起こすとひどく痛むこともあります。
2)変形性骨関節炎
加齢に伴う骨、軟骨の変性です。歩き始めなどに痛みが出ますがひどく腫れることはありません。
3)蜂窩織炎(ほうかしきえん)
皮下に細菌が感染して、皮膚が腫れ上がる病気です。「水虫」などが原因になることもあります。
4)変形性腰椎症による足の痛みやしびれ
足の症状があり痛風を疑って受診する患者さんに意外に多いのが、腰椎の変形に伴う足の症状です。
5)偽痛風
ピロリン酸カルシウムという結晶が関節炎を起こす病気です。高齢者の膝関節や足首の関節に多くみられますが、男性も女性も同様に起こります。レントゲン写真をとると関節の中に石灰化が見られます。
6)慢性関節リウマチ
たくさんの関節が慢性的に痛み、しだいに関節が変形して日常生活が不自由になるつらい病気です。
女性に多く、痛風とは対照的です。
7)回帰性リウマチ
関節が急に腫れて痛む原因不明の病気です。
痛風より症状は軽く、2、3日で治りますが、繰り返します。
関節の変形はおこさず、血清尿酸値も正常です。
痛風と誤りやすい病気もたくさんありますので、自己判断せずにきちんと診察を受けましょう。
痛風の患者さんはいろいろと合併症があります。
痛風と診断されたら合併症がないかどうか、医師にチェックしていただくべきでしょう。
痛風発作の原因は尿酸という物質です。
尿酸はどんな人のからだの中にも一定量あって、血液などの体液に溶けて循環し、尿の中に濾し取られて捨てられます。
ところが、何らかの原因で血液中の尿酸の濃度が上昇して飽和濃度を越えると、からだの中に蓄積してきます。
溶けなくなった尿酸はナトリウムと塩(えん)を作り、結晶になります。
尿酸の濃度が高い状態が続くと、この尿酸塩の結晶が関節の内面に沈着してきます。
痛風発作は、尿酸塩に対してからだの防御機構である白血球が反応し、攻撃する時に起こります。
尿酸塩が関節に溜まると痛風発作になりますが、他の臓器にも溜まります。
なかでも腎臓には尿酸が溜まりやすく、痛風発作のある人は腎機能に注意が必要です。さらに、痛風の患者さんでは心筋梗塞や、脳血管障害などの生命を脅かす成人病を合併する割合も高いのです。
痛風発作の激痛は「尿酸が体に溜まっているよ、治療が必要だよ」という神様の警告と考えるべきでしょう。
尿酸って何?
「尿の酸だから尿の酸性度とかpHといった類のものか」と考えそうですが、尿酸は炭素、窒素、酸素、水素の分子から出来た化学物質で、プリン体と呼ばれる物質のひとつです。
プリン体には多くの種類があって、それぞれが多彩な作用を持っていますが、それらが最終的に分解され、尿の中に捨てられる形になったものが尿酸です。
尿酸の素になる物質は、DNAやRNAとよばれる核酸やATP(アデノシン三リン酸)
という生体エネルギー物質ですこのような材料の老廃物として、普通の人の体内では一日約0.6gの尿酸が作られます。
この尿酸の産出が多くなったり、排泄が低下すると尿酸は体内に蓄積し、痛風を起こします。
要するに、尿酸はプリン体の老廃物、つまり、廃棄物であって、プリン体の「ごみ処理」問題がうまくいかないと痛風になるわけです。
尿酸値の正常値は?
痛風の原因である尿酸の血液中の濃度は、「尿酸値」や「血清尿酸値」と記入されています。
男女ともにこの値が7.0 mg/dl以上では異常で、高尿酸血症と呼ばれます。
痛風に関した医学研究が発表される学会の日本プリン・ピリミジン代謝学会でも7.0
mg/dl以上を高尿酸血症とすることが確認されました。
よく検査結果の報告用紙には正常値とか標準値などが書かれていて、血清尿酸値の場合、男性で3.8〜7.5
mg/dl、女性で2.4〜5.8 mg/dlと記載されていることが多いのですが、これは参考程度に留めておいて結構です。
尚、血清尿酸値が低い場合もあり、1.5mg/dl以下を低尿酸血症と呼びます。低尿酸血症の人の一部には尿路結石が起こることがあります。
尿酸値を上昇させる要因
尿酸値を上昇させる要因を列挙してみます
1)遺伝的な要因
病気は遺伝的素因に環境からの影響が加わって発病します。
痛風の場合にも遺伝的体質が関連します。
約20%ぐらいの痛風の患者さんには父親や叔父さん、従兄弟に痛風もちがいます。
2)食生活の問題
食事内容によっては尿酸値は上がりますが、厳密なプリン体制限は実際には困難で、長続きしません。
最近では「これは食べてはいけない」という食品の制限はあまり指導しなくなりました。
それよりも食べる総量を制限することが大切です。
痛風の患者さんの60%には、肥満があり、肥満度が大きいほど尿酸値は高くなります。
また肥満は痛風の人に多い合併症の大敵です。
食事を減らし、よく歩き、標準体重を守ることが大切です。
痛風友の会の調査によると、食べる速度が速い、一回の食事量が多いと自覚している人の割合は、一般のサラリーマン500名では各々39.8%と30.4%でしたが、痛風の患者さん529名の場合は各々55.6%と51.0%とずっと多いことがわかりました。
よく噛んで味わって食べるように注意しましょう。
3)飲酒の問題
アルコール飲料を飲むと尿酸値は一時的に上がります。
アルコールが体内で分解される時に尿酸が作られること、その際にできる乳酸が体内に尿酸を蓄積すること、一部のアルコール飲料には尿酸の元になるプリン体が多く含まれていることなどがその主な原因です。
アルコールが代謝されるときに尿酸値が上がるので、どんな種類のお酒でも尿酸値や痛風にはよくないわけですが、尿酸の素になるプリン体を含む量は種類によってかなり違います。
プリン体は、ビールに最も多く含まれ、ウイスキー、ブランデー、焼酎などの蒸留酒はあまり含まれていません。
4)ストレスや、行動パターン
ストレスは尿酸値を上昇させるようです。
運動もやり方次第では尿酸値を上げ、特に激しい運動は尿酸値を一時的に上昇させます。発汗や下痢で脱水状態になったときも血清尿酸値は上昇します。
5)他の病気の影響
腎機能が低下したり、血液の病気があったりすると尿酸値が上がることがあります。
悪性腫瘍が原因で高尿酸血症になることもありますので注意が必要です。
6)薬剤の影響
薬剤の中には、尿酸値を上昇させるものがあります。
サイアザイド系降圧利尿薬(フルイトランなど)ループ利尿薬(ラシックスなど)喘息の治療薬のテオフィリン(テオドールなど)結核治療薬のピラジナマイド(ピラジナミドなど)少量のアスピリン(小児用バファリンなど)その他、薬剤ではありませんが健康食品といわれるものの中に、核酸成分を大量に含むものを毎日食べ続けて尿酸値が高くなることがあります。
日常注意するポイントは?
尿酸値を下げるためには次のような点で日常生活の注意をしてください。
1)肥満を解消する
総カロリーを制限する、偏食を避け、多品目を少量づつ、ゆっくり噛んで、食べることが大切です。
2)アルコール飲料を控える
一気のみしない、たくさん飲まない、休肝日を設ける、ビールばかりにしないことを気を付けましょう。
3)積極的に水分を摂取する
季節を問わず尿が一日2リットル以上になるようにすることが理想ですが、少なくとも毎日2リットル以上の水分をとること。
4)軽い運動を行う
ウォ−キングなどの有酸素運動は尿酸値を上げず、痛風の人に多い高血圧などの合併症にも有効です。
5)精神的ストレスをうまく緩和する
のんびりゆっくり型のストレス対策が必要です。
痛風発作の応急処置はどうするか
1)患部を冷やすこと。
2)発作の起こった関節を安静にすること。マッサ−ジなどもってのほか。
3)禁酒
4)バファリンなどのアセチルサリチル酸(アスピリン)はたくさん飲むと発作がひどくなりますので使わないほうが良いでしょう。
解熱剤として処方された坐薬があればそれを使っても良いでしょう。
5)出来るだけ早く医師を受診すること。
お医者さんの痛風発作対策
代表的な治療法を紹介します。
1)非ステロイド系抗炎症薬
消炎鎮痛剤などとも呼ばれる一般的な薬です。
短期衝撃療法といって短期間に限り多めに服用すると良く効きます。
ただし、腎臓の機能が低下している人や胃潰瘍で治療中の人などは使えませんので要注意です。
医師の注意を良く守りましょう。
2)コルヒチン
痛風発作の予兆期や、発作のごく初期であればコルヒチンは有効ですので一錠服用します。発作が本格的になるとたくさんコルヒチンを飲まないと効きませんし、たくさん飲むと副作用が心配ですから、発作がひどくなればコルヒチンはのまないほうがよいとされています。
3)副腎皮質ステロイド薬
強力に炎症を抑える作用があり、よく効きます。
内服もありますが静脈注射用の脂肪化したステロイド薬は特に良く効きます。
ただし、この薬が必要なのは重症例だけで、一般の痛風発作にはまず必要ありません。
尿酸を下げる薬はどんなものがあるか
血清尿酸値を下げる薬を総称して尿酸コントロ−ル薬と呼びます。
尿酸コントロール薬には、アロプリノール(商品名ザイロリック、アロシト−ルなど)
ベンズブロマロン(商品名ユリノ−ムなど)プロベネシド(商品名プロベネミドなど)
が代表的です。
また、尿酸値は下げませんが、尿中の尿酸を溶けやすくして尿路結石を予防する薬としてウラリットがあります。
これらは痛風発作の痛みを抑える作用も、腫れを取る作用もありませんから痛風発作の治療薬ではありません。
毎日服用して体内に蓄積した尿酸を減らし、痛風発作を予防したり腎障害を改善させる薬です。
痛風発作が治まった時点で、患者さんはお医者さんとよく相談し、尿酸値を下げる尿酸コントロール薬を飲み始めるべきかどうかを判断してもらうことが必要です。
これらの薬は、相当長期間続けることが必要で、大部分は一生続ける必要があるようです。
医師の注意を良く守り、指示どおり服用するようにしましょう。
それが、薬の必要量を減らすコツです。 |
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